最近、熊の出没のニュースをよく耳にします。
今日も生徒さんの一人が熊を間近で見たと教えてくれました。
そんな時に慌てず対処できるよう、事前にどう行動すべきかを知っておくことはとても大切です。

バーナビーやノースバンクーバー、トライシティなど、メトロバンクーバー周辺では
ブラックベアが人の生活圏に現れることがあります。
落ち着いて対応すれば多くの遭遇は安全に離れることができます。
ここでは高校留学中の皆さん向けに、通学・放課後でも実践しやすい対処法をまとめました。

なぜ今の時期にクマの目撃が増えるの?

  • 秋から初冬にかけて、冬ごもりに備えて大量に食べ物を探すため活動が活発になる。
  • 自然のベリーなどが減り、家庭ゴミや落ちた果実、ペットフード、BBQの油、ハロウィンのカボチャなど人間由来の強いにおいに引き寄せられやすい。
  • 沿岸部では冬ごもり入りが遅い個体もおり、条件によっては初冬まで活動することがある。

クマに遭遇したらどのように対処するべきか

カナダの政府サイトに記載をしてある内容を翻訳・まとめました。
原文は下記のサイトで確認ができます。
How to react if you encounter a black bear – Forillon National Park

まずは落ち着くこと。
クマに遭遇したら怖くてなかなか落ち着くことは難しいでしょう。
ただ、落ち着いていれば、状況をコントロールし、より良い判断ができます。
また、落ち着いていることはクマを安心させ、クマのストレスを下げることにもつながります。

クマに向かって落ち着いた声で話しかけてください。
怒鳴ったり、大きな声を上げるのではなく、普通の声量でクマに話しかけてください。
話し声を聞けば、あなたが人間だとわかります。
ブラックベアはあなたを自分より強いと考え、立ち去る可能性が高いです。
クマに話しかけることであなた自身も落ち着き、状況をコントロールしやすくなります。

子どもがいる場合は抱き上げ、グループは固まってください。
一つの大きな存在に見えることで、クマに強い印象を与えられます。

その場の状況をよく観察し、最適な行動を判断してください。
クマはあなたに驚いたのか?など、状況を見極めましょう。

クマに近づいてはいけません
おとなしく見えるクマでも、近づかれて脅かされたと感じれば攻撃的になることがあります。
クマとの距離は最低でも100メートル(スクールバス5台を連結した長さ)を保ってください。

クマに遭遇しても走らないでください
追いかけ反応を引き起こすおそれがあります。
上り坂でも下り坂でも、人間がクマより速く走って逃げ切ることはできません。

クマに背中を向けないでください
常に横にずれるか後退して離れ、つねにクマを視界に入れておきましょう。

バックパックを落とさないでください
攻撃された場合、体を守る役目を果たすことがあります。

クマとかなり近い距離になってしまったら
クマに十分なスペースを与え、逃げ道をできるだけ多く確保してください(=進路をふさがない)。

グループでハイキングしている場合、野生動物を取り囲まないでください。
追い詰められたと感じさせないような隊形でまとまりましょう。

クマの様子で見分ける

1 クマがあなたに気づいていない
● クマから目を離すことなく、静かにその場を離れる。
● 広く迂回し、クマが去った後に戻るのは可。

2 クマが立ち止まってこちらを見る
● その場で停止。急な動きはしない。
● 
普通の声量で落ち着いて話す。(人間で、危害を加えないと伝える)
● あなたがクマにとって見えにくい場合、クマはあなたを感知するため後脚で立つことがある。
これはクマが周囲の確認をするサインで攻撃サインではないため、パニックにはならない事。
● 立ち去らない場合は、クマに顔を向けたまま、背を向けずにゆっくり離れ、来た道を戻る。

3 クマが後脚で立ち上がる
クマは非常に発達した聴覚を持っています。
そのため、気配を感じると周囲を見て匂いを嗅ぐ“確認行動”をおこないます。
クマが立ち上がっているのをみると、迫力があって恐怖を感じるかもしれませんが、
攻撃の合図ではありません。

● クマがあなたに気が付いたのに、立ち去らない場合は、クマに顔を向けたまま、
背を向けずにゆっくり離れ、来た道を戻る。

4 クマがあなたを見えているのに、自分の行動を続ける
● 大きく迂回してその場を離れる。

クマが人慣れしている場合にこの行動をとる場合があります。
人に慣れてるからと言って人間への恐怖心亡くなったわけではなく、安全というわけではありません。
個体ごとの距離感を侵すとストレスや攻撃行動につながることがあります。
必ずクマから距離を置くようにしましょう。

5 驚かせてしまった(不意に近距離で遭遇)
誤ってクマを驚かせてしまった場合に、驚いたクマは狂暴に見えるかもしれません。
急に驚かされたら、誰でも自分の身を守るために攻撃的になるでしょう。
この場合に重要なのはクマにあなたが脅威でないということをわかってもらうことです。

● 顔を向けたまま普通の声量でやさしく話す/急な動きをしない/ゆっくり後退
● 
あなたが脅威ではないと伝えることが大切

6 木の上にいるクマ
● 顔を向けたまま静かに離れる。広く迂回
● もしあなたに気が付き興奮している様子の場合には、優しく話しかけ後ろに下がる

7 小グマを見かけたら
子グマを見たら母グマが見えなくても、近くにいると考えてください。
メスのクマは子どもを守るため、人がいると小熊の安全を心配して強いストレス状態になる可能性が高いです。
● 顔を向けたまま普通の声量でやさしく話す/急な動きをしない/ゆっくり後退
● 母グマが現れたら目で確認し続けながら、落ち着いてその場を離れる 

ブラックベアがあなたに気づき、こちらへ動き始めた場合

クマがストレスの兆候を見せながらあなたに向かって近づいてくる場合は、防御行動です。
あなたがクマの「パーソナルスペース」に入り込んでおり自分や(母グマの場合は)子グマの
安全を守ろうとしている、ということを意味します。

● その場で動かず踏みとどまる
● 怒鳴らない
● クマに物を投げない


威嚇のための見せかけの突進
防御的なクマが人に突進するときは威嚇をしている時で、たいてい人に達する前に止まります。
(見せかけの突進=Bluff Chargeと呼びます)

クマが止まったら再び離れ始め、落ち着いた声で話しかけて安心させるてください。
そうすることでクマが落ち着き、あなたはその場を離れやすくなります。

Bluff Charge中、クマは進路を反れて逃げていくこともあります。
Bluff Chargeはまれで、多くは人がクマに近づきすぎたことが原因です。
クマとの十分な距離を保ち、近づかない限り、Bluff Chargeが起こる可能性は非常に低いでしょう。

ブラックベアが攻撃してきた場合

クマがあなたに接触したとき、それは「攻撃」が起きたと見なされます。
クマが接触した、あるいは今にも接触しそうな場合は、死んだふりをしてください。
(クマが達する前で、かつ使用できる状況ならベアスプレーを使ってもよいです)

防御的なクマは、戦うことや食べることを目的としていません。
クマが望んでいるのは脅威を止めることだけです。
あなたが地面に動かず横たわっているのを見ると、クマはもはやストレスの原因がないと理解し、ストレスは下がるはずです。

死んだふりの方法
● うつ伏せになり、足を開いて、両手を首の後ろに当てる
● 静かにして動かない。
● もしクマに仰向けにされても、静かにうつ伏せに戻る。
(この状況では、バックパックは体を守るのに役立ちます)

クマがあなたを脅威ではないと理解すれば、クマはその場を離れていきます。

クマが去ったと思われる場合
● 
起き上がる前に、クマがその場から完全に去ったことを確認する
(30分間程度、動かず横たわったままで様子をみる)
クマがまだいるのに起き上がると、あなたが戦おうとしていると受け取られ、
動けなくされるおそれがあります。

この種の攻撃はたいてい数分以内で終わります。
しかし、それでもクマが攻撃を続けるなら、それはクマがあなたを獲物とみなした可能性があり、
戦術を変える必要があります。
その場合は立ち上がり、拳・足・棒・石など使えるものは何でも使って戦う必要があります

捕食的なクマと防御的なクマの違い

捕食的(predatory)なクマ
捕食的なクマは極めてまれですが、最も危険な存在です。
最初は脅威に見えにくく、うなり声も出さず静かに近づいてきます。
じっとこちらを見つめ、ネコがネズミを狙うような視線を向けます。
この時点で強い警戒が必要です。

また、捕食的なクマは通常オスで、登山道で人の後をつける、寝ている人を襲うといった行動をとることがあります。

防御的(defensive)なクマ
うなる/歯を鳴らす/よだれを垂らす/前脚で地面をたたくなど、目立つ行動をとります。
見た目の迫力は大きいが、恐れるべきはむしろ捕食的なクマです。

クマが落ち着いてあなたの方へ近づいてくる

あなたが相手にしているのは非防御的(non-defensive)なクマです。

クマはためらいがちに近づき、鼻先を上げてあなたのにおいを嗅ぎ、正体を確かめようとします。
単なる好奇心のクマである可能性もあります。

対処法
● 落ち着いて、はっきりした口調でクマに話しかける
● 進路を譲る(クマはただ自分の道を進みたいだけかもしれません)
● 自信を持ってふるまう(クマが前進をやめることがあります)

捕食的な危険なブラックベアが近づいてくる

もしクマが強い視線でじっと見つめ、静かに、しかし積極的に追ってくる(ストレスの兆候を見せない)場合、捕食的な危険なブラックベアです。

対処法
● 動きを止め、立ち向かい、攻撃的にふるまう
● できる限り威圧する:体を大きく見せる、岩の上に立つ、腕や枝を頭上で振る、叫ぶ、足を踏み鳴らす、(持っていれば)ベアスプレーを使う。
● あなたを手強い相手だとクマに理解させ、軽々しく戦おうと思わせないこと

捕食的なクマは身を守るためではなく、あなたを食べるために近づいています。
全身全霊で反撃すれば、退かせられる可能性があります。

非防御的(non-defensive)なクマが攻撃してきたら、身を守るために戦ってください。
死んだふりはしないでください。
捕食的なクマは防御が目的ではなく捕食が目的です。命を守るために戦う必要があります。

使えるものは何でも武器にし(拳・足・棒・石・ナイフなど)、鼻や目などの急所を狙ってください。クマに対して、本気で重傷を負う/命を落とすおそれがあると素早く分からせる必要があります。
クマに決して屈しないことを示し、戦いを諦めさせるのです。
叫ぶことも忘れないでください。近くの人が助けに来られるかもしれません。

グループの場合は、密集して一緒に行動してください。

クマに遭遇すると驚くのは当然です。ただ、遭遇自体は珍しいことではありません。

だからこそ、事前に正しい対処法を知り、準備しておくことが大切です。
万が一の時にも落ち着いて、適切に行動できるよう備えましょう。


出典・免責事項(必ずお読みください)

本記事は、カナダ政府サイト Parks Canada – Forillon National Park “Bear encounter” に掲載された内容をもとに、
日本語で翻訳・要約したものです。

原文(英語)https://parks.canada.ca/pn-np/qc/forillon/securite-safety/faune-wildlife/rencontre-ours-bear-encounter1

できる限り正確を期していますが、翻訳・要約の性質上、日本語に誤りや解釈の違いが生じる場合があります。
内容の正確性は英語の原文が優先されます。
安全に関わる判断の前には必ず英語原文を確認し、現地の掲示・レンジャー(Conservation Officer)等の最新の指示に従ってください。